アンテナセレクタ


 ◆ 2入力4出力アンテナセレクタ

 ◆FTdx3000用アンテナ自動セレクタ

 ◆アンテナセレクタの拡張(FTdx3000とFT991の切替回路増設)

 ◆アンテナセレクタのバンド表示(その1 ロジック回路で構成)

 ◆アンテナセレクタのバンド表示(その2 マイコン と 7セグシリアルドライブ)

 ◆アンテナセレクタのバンド表示(その3 プログラムと基板実装)

 

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◆2入力4出力アンテナセレクタ
2つのトランシーバー出力を、マニュアルで4つのアンテナに切替えられるアンテナセレクタを製作してFBに使用しています。

当局のメイントランシーバーはFTdx3000ですが、この他にFT991がありもっぱらV/Uに使用しています。FT991のHFアンテナ出力は1つしかなく、複数のアンテナを使うには何らかのアンテナ切替え手段が必要になりますが、これはFT991に限ったことではなく最近の普及クラスのトランシーバーは皆同じ状況にあると思います。

そこで4つのアンテナの切替えと、入力側にも2台のトランシーバーを切替えられるアンテナセレクタを製作しました。

回路構成は単純に、トランシーバー側に1個、アンテナ側に3個のリレーを使って、トランシーバー側は2つの押しボタン、アンテナ側は4接点のロータリースイッチで各リレーをON/OFFしています。

ここで各リレーは手持ちの同軸リレーを使っていますが、HF帯では一般的なリレーでも使えると思います。またこの回路の収納BOXは2つに分けられ、同軸ケーブルとリレー駆動信号コードでつないでいます。

運用バンドを切り替える場合、ロータリーSWを回さなくてはいけないので若干面倒ですが、それほど頻繁にバンド切換えはしないので許容の範囲であると思います。
 
アンテナセレクタ(正面)        背面(同軸ケーブル接続状況)
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◆FTdx3000用アンテナ自動セレクタ

先に製作したアンテナセレクタではバンド切替が若干面倒なので、FTdx3000のバンドデータ出力を利用して、トランシーバーのバンド切替に連動して自動でアンテナを切り替える「アンテナ自動セレクタ」を製作しました。

FTdx3000にはリニアアンプへの接続端子「LINEAR」があり、これには1.8MHzから50MHzバンドを1から10に割り当て、そのバンドデータをBCD(Binary Coded Decimal、1・2・4・8)で出力する端子があります。
                     FTdx3000 バンドデータ(Eは5V出力)  
「LINEAR」端子(DSUB-15P)のPin4〜7には、BCD出力として5Vが出力され(Eで表記)、これを表にすると右のようになり、各バンドの割り当て番号(バンドNO.)が10進数で表されます。
このBCD出力でアンテナ切替リレーを駆動することで、FTdx3000のバンド切替えと同時にアンテナが自動的に切替わる自動セレクターが製作できます。

                             7/14/18/50 を切り替える場合
例えば、現在当局の使用アンテナは4本(7/14/18/50)なので、アンテナがあるバンドだけ上表から抜き出して整理すると、右のようになります。

この表からまず、
バンドデータ A(1:P4)により 7&14 と 18&50 を切分け、次にバンドデータ C(4:P6)で 7/50 及び 14/18 に切分けることにより、3つのリレーで4つのバンドを切替えることができます(P6AとP6Bは連動している)。
一般的にこの様なBCDデータの処理には、BCD入力に対して0から9の出力が得られる BCD to Decimal デコーダを使いますが、ここでは使うのがデータA(1:P4)とデータC(4:P6)のみなので、ロジックICなどを使わない簡易な回路にしました。

回路構成はBCDのA(1:P4)とC(4:P6)をトランジスターで受け、目的のアンテナリレーを駆動するリレーをON/OFFしています。これらのアンテナリレーは最初に製作したマニュアル切換えアンテナセレクタと同じ同軸リレーですが、ここで扱っている周波数がHFと50MHz、かつ100W程度なので、一般回路用リレーでも使えると思います。
 
FTdx3000用の自動アンテナセレクタ回路図(7/14/18/50 のみ)
上図でアンテナリレー6Aと6Bがある筐体(アンテナ切替BOX)はセレクター本体と別になっており、その駆動電源は同軸ケーブルに重畳して供給しています。
同軸リレーC,D格納のアンテナ切替BOX
このアンテナ切替BOXの筐体は、
一応防水構造になっているのでシ
ャック内に置く必要は無く、室内
へ引き込む同軸の本数を半分に減
らせます。


もっともFTdx3000にはアンテナ
端子が3個あるので、この様な装
置を使うアリガタミはあまり無い
と思いますが、カミナリが怖い時
にトランシーバーの後ろに手を伸
ばして同軸ケーブルを
1本だけ抜
きさしするの
は意外と便利です。

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◆アンテナセレクタの拡張(FTdx3000とFT991の切替回路増設)


当局のシャックにはFTdx3000の他にFT991がありますが、もっぱらV/UHF専用でHFには使っていませんでした。これはアンテナを両トランシーバーに切替えるのが面倒だったことと、そもそもFTdx3000よりノイズや音質がマイナーであったこともその理由です。

しかしFT8を始めてから、スポット周波数だけを使用するのにFTdx3000ではもったいない(?)という気がして、FT8専用機としてFT991を使うことにしました。最もFT991などHFのアンテナ端子が1つのみのコンパクト・トランシーバーで複数のアンテナを使う場合には、このような装置が有効だと思います。

FT991のバンドデータ(BCD出力)は、背後パネルの「TUN/LIN」端子(コネクタはminiDIN-8P)にバンドデータA(1:Pin4)、B(2:Pin5)、C(4:Pin6)、D(8:Pin7)として出力されているので、これをFTdx3000のバンドデータと切替える回路を増設します。

この切替は同軸切替と連動させる必要がありますが、これには切替えた側が接地される出力端子を持っているラッチ式の同軸リレーA(2GHz/150W)を使っています。実際の回路では2つのトランシーバーからのBCD出力を3ステート(入力〜出力導通&絶縁)バッファ(TC74AC125P)で受け、これを同軸リレーAの接地出力で選択します。

次に両3ステートバッファからのBCD出力をORで受け、その内A(1:P4)及びC(4:P6)でアナログスイッチ(CD4066B)を介しリードリレーA、CをON/OFFしています。リードリレーAは7/14と50/18を切り分ける同軸リレーBを駆動し、リードリレーCはアンテナ切替BOXの同軸リレーC、Dの駆動電圧を供給しています。
 
FTdx3000/FT991の自動アンテナセレクター回路図
このようにBCD出力の切替えをリレーでなくロジックICで行う方法は以前よりやってみたかったのですが、当初もくろんだ「アナログスイッチで直接同軸リレーを駆動する」ことはうまくいきませんでした。それは同軸リレーとアナログスイッチの駆動電圧が異なる(5Vと12V)ことと、電流容量が大きいアナログスイッチが高価であるため、とりあえずリードリレーを追加した回路にしました。

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◆アンテナセレクタのバンド表示(その1 ロジック回路で構成)


アンテナセレクターの動作には直接関係ありませんが、これを製作している途中で「BCD信号でバンドを表示させたら面白そう」と思い、7セグメントLEDで選択したバンドを表示する回路を作ってみることにしました。

最初に各バンドの数値に対する7セグLEDの各セグメント(a、b、c、d、e、f、g、pは小数点)は、上のケタと下のケタでそれぞれ下表のようになり(点灯の場合Xで表現)、例えばセグメントの a は 3.5(3)/21(2)/24(2)/28(2)/50(5) の時に点灯させれば良いことになります。
 
BCD信号で7セグメントLEDにバンドを表示させる          7セグメントLED
                         7セグLEDを表示(上の桁の a セグメントの点灯例)
この表からロジックICで回路を組みますが、まず BCD から10進数を得る BCD to Decimal デコーダ(TC74HC42AP)を使います。

しかしこのチップは反転出力なので、例えば3.5MHzの時、デコーダの2の出力端子だけ負(L)で、他全部が正(H)になるので、上の表をそのまま使って論理を考えるのには多少混乱することがあります。

この場合上の表のままで回路を構成するためには、カソードが負の場合に点灯するアノードコモンタイプの7セグメントLEDを使うと、そのままで回路が組めます。
またこのチップはBCD入力に対し0から9までの出力を得ますが、0は使わず10が必要なのでB(2:P5)とD(4:P7)のAND または NAND(反転出力)を用意します。

上図はセグメント a を点灯させる例を示したもので、3.5/21/24/28/50 に対し、2,7,8,9,10の出力のANDをとります。これよりこのバンドの内どれか1つが L になればAND出力は L(7セグLEDのカソードが L) となり点灯し、それ以外ではANDの入力が全て H になるので点灯しません。

なお一般的なカソードコモンの7セグLEDを使う場合には、ANDの先にNORかNOTの反転ロジックを追加しますが、デコーダの出力を一旦反転させて、ORで回路を組むこともできます。

次にここで用いるANDチップには2〜4入力のものが入手できますが、2入力は1チップに4回路、4入力は2回路になるので、必ずしも多入力のANDが適しているとはいえません。

この様に7セグLEDの各セグメントについてもロジックを組んでいくと、結構複雑な回路構成になり配線はかなりゴチャゴチャになります。そこで7セグメントLEDの各セグメントを選択して点灯させるのではなく、BCD入力に対し7セグメント出力が得られる7セグドライバ(TC4511など)を使う方法があります。
 
7セグドライバを使う場合では、右の図のように
表示させる値のBCD値を入力すれば良いのでかな
りスッキリします。


この場合7セグドライバの出力は H で点灯になる
ので、7セグメントLEDにはカソードコモンタイ
プを使用します。
7セグLEDドライバを使った場合を下の表に示します。これより例えば1を表示させるには A を、3を表示させるには A と B をドライバに入力すればよく、かなり簡単になります。

なおこの表で7MHZの上のケタ表示の B、DがX (=10)となっているのは、7セグLEDが9以上では点灯しないことを使っているためで、これ以上の値(10〜15)あれば何でも構いません。
 
7セグメントLEDドライバICを使った場合(左は正論理(反転が必要)、右は負論理)

                     7セグメントLEDドライバICを使って上の桁を表示する回路(その1)
いま上の表で左の表記(正論理)を使って回路を構成する場合、7セグLEDドライバへの入力は正論理になるので、右図のようにAND出力をNOTやNORで反転して使うことになります。

ここでさらにこの表記の反転を考えると、上表右に示したようになり(負理論)、この場合はAND出力を反転することなく7セグLEDドライバにつなげることができます。
                7セグメントLEDドライバICを使って上の桁を表示する回路(その2)
そこで両方を比較してなるべく入力数が少ない方を選ぶことにより、ICの数を減らし、かつ配線をより簡単にすることができます。

右図は上の桁(10の桁)表示で、AとBは上表の右(負理論)を、C、D、P(ドット)は上表左(正理論)を使った回路で、最初の回路よりかなり簡単に構成できることがわかります。
             7セグメントLEDドライバICを使って表示する回路(7セグLEDドライバは省略)
以上はANDを使った回路ですが、デコ
ーダ・74HC42APの出力を一旦NOR
で全て反転させておいて、これをOR
で構成することもできます。


この方法は上記の方法よりシンプルに
なり、さらにゲートの数を減らすこと
ができます。


右図はこの方法で上下の桁を表示させ
る回路で、多数のNORチップが要りま
すが、その他は2入力ORが4、3入力
ORが5なので、ICチップとしては3個
のORチップで構成できます。
ブレッドボードによる回路の検証(14MHzの場合)
上の回路を実装する前にブレッドボードで検証してみました。

これはFTdx3000を14メガバンドに設定した時に、バンド割当番号「5」と、バンド表示を7セグLEDで表示させた状態です(なおバンド割当番号の表示回路は回路検証用なので本回路には関係なし)。

このようにブレッドボードを使った回路の検証は必ずやっておいた方が良いと思います。
アナログ回路に比べデジタル回路は H か Lの検証なので簡単ですが、それでも勘違いやシマッタはつきもので、一発でOKとはなかなか行きません。

以上のようにロジックICを使うと、回路自体は簡単でもその実装はかなりゴチャゴチャになり結構大変です、と書いていくと「マイコンにやらせた方が簡単じゃない?」と言う声が聞こえてきます。

そこでロジックICを使ったバンド表示は、ブレッドボードでの回路検証にとどめて実装は中止し、マイコンによるプログラム開発で表示させることにしました。

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◆アンテナセレクタのバンド表示(その2 マイコン と 7セグシリアルドライブ)


マイコンと言えば「TK80」と言う時代がありましたが、現在では非常に多くのワンチップマイコンが世の中にあります。その中で arduino、Raspberry Pi、PIC が世の中を席巻しているようですが、それぞれ特徴があり開発環境や言語を考えると、本項のバンド表示など簡単な用途に使うには arduino が簡単にかつ費用的にも適していると思います。

arduino には開発ボードUNO(8bit)を基本として、実装タイプの nano、pro mini、また PIC のようなICチップ本体だけのAVRマイコンもあり、その価格は何れも1K円以下で、チップ本体では0.3K円以下と非常に安価です(12bitや16bitの arduino マイコンは当然もっと高くなります)。

またプログラムの書込みはUSBシリアルコードでできるため、PICのように数K円の書き込み装置が必要ありません。さらに開発環境・言語はC/C++を簡単にした言語なので、マイコン初心者でも簡単にプログラム(arduinoではスケッチと言う)を作ることができます(PICはCが主流、アセンブラもあるが・・)。

ここでは arduino のマイコンチップ、ATMEGA328Pを回路基板に張りつけて使うために、ピンソケットで抜き差しができる arduino の互換機を作りましたが、これにはブートローダー書込済みのATMEGA328Pとプログラムの書込みに必要なUSBーシリアル変換回路が必要になり、両者を足すとその価格は(最近の情勢では)arduino uno の開発ボードより高価になってしまいました。
 
  arduino UNO 開発ボード   ATMEGA328PとUSBシリアル変換回路による arduino UNO 互換機 
プログラムの開発は、この互換ボードのデジタル入力にFTdx3000のBCD出力(または4連のビットスイッチ)をつなぎ、その状態で動作を検証し、完成したら別途購入してあるATMEGA328Pをソケットに挿してそのプログラムを書き込む手順となります(あらかじめブートローダーを書き込んでおく必要がある)。

次にバンドを7セグメントLEDに表示させる方法ですが、前項で示したように各セグメントを個別に点灯させるには7×2個(10と1のケタ)=14個のデジタル出力が必要になります。また7セグドライバを使う場合には4×2個になりますが、何れにしてもATMEGA328Pから7セグLEDへかなりの数の配線が必要となります。

そこでラッチ付きシフトレジスターを使ったシリアル7セグドライバを使うことにしました。これは秋月電子で入手できる基板で、これを使うことにより3本の配線だけで何ケタでも表示が可能になります。
 
   秋月電子 7セグLEDシリアルドライバ基板  基板にピンソケットを付けて7セグLEDを挿入
 
このシリアルドライバ基板を使った7セグLEDへの配線は、ATMEGA328Pのディジタル出力D10とD11、D13の3本だけでOKです。

実装ではATMEGA328Pの基板と7セグLEDドライバへの基板が別になるため、その間の配線が必要になりますが、VCCとGNDを加えて5本となり非常にスッキリと実装できました。
なおセレクター回路からのA・B・C・D信号はデジタル入力ピンD5〜D8につなぎます。

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◆アンテナセレクタのバンド表示(その3 プログラム と 基板実装)


ATMEGA328Pに書き込むプログラムは、7セグLEDの表示をシリアルドライバを使って行うことを前提に作成しますが、プログラム自体は非常に簡単です。
 
トランシーバーからのBCD出力をディジタル入力で受け、そのA・B・C・Dの値から BCD = A+B*2+C*4+D*8 を求め、バンドNO.(1〜10/1.8〜50)を検出します。

次にこのバンドバンド割当番号からバンドテーブルを参照してバンド表示の上のケタと下のケタの数値を決め、その値のバイナリィデータをテーブルから参照し、それぞれ上/下の順で出力します。

例えば14MHzの場合BCD=5を算出しますので、これよりバンドテーブルから「14」を得、最初に0b01100000を、次に0b01100110を送出すると、その値までカウントし値を保持します。
このようにマイコンを使ったバンドの表示は非常に簡単で、7個のロジックチップが1個のマイコンチップで済み、かつ配線が非常にラクになります。

実装では、まず自動セレクターの前面パネルに7セグLED2個分が入る長方形の穴を空け、この7セグLEDとシリアルドライバをセットした両面スルーホールのユニバーサル基板をパネルに固定します。

この基板とアンテナ切替回路及びマイコンがセットされた基板とは別になるため、NHコネクタと呼ばれる基板配線用のコネクタを使ってみました。これはホール間隔が2.54mmのユニバーサル基板用で、各基板間やスイッチプラグ間をコネクタ接続にすることで製作途中の回路検証が非常にやりやすくなりました。

なお基板上へのロジックIC、マイコンのセットにはソケットを使用しています。自信のある方はそのまま基板に付けても良いと思いますが、コネクタを使うことでICを挿す前にそのピンで回路の点検ができます。
 
  セレクタ回路とATMEGA328P(一番下)       ケースに収納した状態
完成した自動アンテナセレクタをFT991の上にのせて運用している様子を下に示します。パネルの緑ボタンを押すとFTdx3000に、赤ボタンを押すとFT991に切替わり、それぞれのアンテナに自動的につながってそのバンドを表示します。

なお7セグLEDの輝度が明るいためカメラのオート設定では表示の数字が判別できないので、マニュアル設定の「夜間撮影」のような設定で撮影しています。また7セグLEDの上の青LED表示は「このバンドのアンテナはあるよ」と言う意味で、無い場合は赤LED表示になります(あまり意味がないが穴が開いていたので追加したもの)。
 
    FTdx3000を選択し14MHzに設定         FT991を選択し18MHzに設定
この自動アンテナセレクタを使ってみて当初考えていなかった用途にも気づきました。それは同じアンテナでFTdx3000とFT991を瞬時で切替えることができるので、その受信状況(性能)を比較することができることです。

その結果は(あたりまえですが)FTdx3000はFT991に比べかなり静かで良く聞こえることがハッキリ分かりました(現状では古いリグになるが中古価格を考えると同程度)。

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