SDRでバンドスコープ



SDRドングルとアプリでトランシーバーのバンドスコープ

FTdx3000のバンドスコープ(9MHz IF OUT/RF OUTの利用)

FT991のバンドスコープ(70MHz IF OUT の引出し改造)


◆SDRドングルでトランシーバーのバンドスコープ


当局ではFTdx3000とFT991が稼働中ですが、FTdx3000にはバンドスコープがあるものの大きさが4.3インチと小さく、スぺクトラムは受信信号がダンゴのように見えるだけでイマイチです。またFT991は同様に表示が小さいのと、リアルタイム表示ではなく間欠、あるいは表示SWをイチイチ押す必要があるため、SDRによるバンドスコープを別に設けることは大変有効と思われます。

SDRドングルでトランシーバーのバンドスコープを実現するには、SDRドングルのANTに何を入力するか、ということから以下の3つの方法があります。
 @トランシーバーのアンテナ、または受信専用のアンテナをつなぐ
 Aトランシーバーのアンテナ出力(RX out)をつなぐ
 Bトランシーバーの中間周波段の出力(IF out)をつなぐ

@は送信出力でSDRドングルを壊す恐れがあるため、送信時にはANT端子をアースに落とし、かつ送信電力から保護する回路が別途必要になります。
Aはトランシーバーに RXout の出力がある場合の方法です。この端子は受信時にトランシーバーのアンテナにつながり、送信時は端子につながる機器(ここではSDRドングル)を保護する機能が備わっています。
Bはトランシーバーに IFout の出力がある場合の方法です。IFの周波数はトランシーバーで異なるため、SDRドングルの入力設定に注意がいります。またこの端子がないトランシーバーでは、その出力を引き出すことになり、これはトランシーバーの改造になるのである程度の「覚悟」が必要になります。

@、AとBで大きく異なる点は、スペクトラム表示が前者ではフィックスモード、後者ではセンターモードになることです。トランシーバーのバンドスコープでは、あまり帯域を広く表示すると信号識別ができないため、普通センターモードが使われますが、SDRによるバンドスコープではPCモニターに広く表示できるのでフィックスモードの方が使いやすいと思います。
 FTdx3000の背面にあるIF/RX出力端子  
A、BのIF out/RX out 出力端子はミドルクラスのトランシーバーに限定されますが、逆にこれがあるトランシーバーを持っているのなら、SDRドングルを使わない手はありません。

しかし最近では@の機能を持つ「SDRアンテナシェアラー」と呼ばれる装置が安価に入手できるようになり、古いトランシーバーやエントリークラスのトランシーバーでもSDRによるバンドスコープがずいぶん簡単に実験できるようになりました。
なおAとBでは、受信アプリによってはAのIF出力受信が使えなかったり、中間周波数の値によって設定が異なるなどの違いがありますが、最終的には使うアプリによって選ぶことになります。

次にトランシーバーのバンドスコープとして使うには、受信周波数やモードをトランシーバーと連動させる必要がありますが、これには以下の2つの準備が必要です。
 @トランシーバーのCAT信号をPCに入力する
 AこのCAT信号を受信アプリに連動するため OmniRig というユーティリティアプリを使用する

@はまずトランシーバー側でCAT信号出力をUSBまたはD-SUBかを決め、同時にボーレートも設定します。
USBを使う場合にはトランシーバーのメーカーが提供する仮想ポートアプリをダウンロードして、PCにインストールしたのちに一旦PCを再起動します。USBコードをPCにつなぎそのポート番号をディバイスマネージャーで確認します。
OmuniRigのトランシーバー設定ウインドウ 
AはSDR受信アプリとトランシーバーの受信周波数、モードを同期させるアプリケーションで、ダウンロード後インストールするとPCのProgramFilesにAfreetというフォルダが生成され、そこにOmniRigが入ります。

ここでOmniRigを実行すると、トランシーバー設定ウインドウが開きここでトランシーバー名、ポート番号、ボーレートを設定します(他の項目はそのまま)が、同時に2つのトランシーバーを認識することができます。

このようにOmniRig自体はそのPCで認識したトランシーバのCAT信号を制御するもので、SDR受信アプリケーションとは別に設定するものです。
この状態で各受信アプリを起動してOmniRigで設定したRIG1かRIG2を選択すれば、トランシーバーのバンドやモードに合わせてバンドスコープが表示されます。また逆にバンドスコープ上の信号波形をマウスでクリックするとトランシーバーの周波数が追随し、ダイヤルを回さなくても瞬時に目的の信号に合わせることができます(双方向や片側制御は設定できる)。

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◆FTdx3000のバンドスコープ(9MHz IFoutとRXoutの利用)


FTdx3000は背面にIF/RXout を持っており(購入時には何に使えるのか分からなかった!)簡単にバンドスコープが実現できます。このIFoutには第一中間周波数の9MHzが出力されますので、これをSDRドングルに入力すれば各バンドのバンドスコープが簡単に実現します。この場合各アプリはIF信号入力の設定メニューがあり、OmniRigで設定したリグ番号(ここでは1)と受信周波数を9MHzにします。

RXout を使う場合にはリグ番号を設定するだけですが、どちらの場合もトランシーバーとアプリを相互に連携させるか、もしくはトランシーバーからアプリへの一方通行(その逆もできる)にするか、を設定することができます。
7MHz帯 RXoutをSDR Consol V3で受信 
FTdx3000について、次のような組み合わせでRXout/IFout を受信してみました。
SDRドングル:
RTL-SDR(8bit)とNSi.SDR(12bit)SDRアプリ:
HDSDR、SDRuno、SDR ConsoleV3

この中でベストチョイスと思われたのはSDR Console V3で RXoutを受信するスタイルでした。
その理由は
 ・スペクトラムの周波数軸をフィックスで使うことができる(IFout ではセンターのみ)
 ・機能が非常に多い
 ・トランシーバーとの連携にストレスがない
 ・SDRドングルにはNSi.SDR(12bit)、RTL-SDR(8bit)どちらでも使える

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◆FT991のバンドスコープ(70MHz IFout の引出し改造)


FTdx3000に限らず、IFout があるトランシーバーでは簡単にSDRドングルで受信ができますが、FT991のようにこれがない場合リグに手を入れてIF信号を引き出す改造が必要になります。

このようなIF信号を外部に引き出すため、インピーダンス変換回路を基板にしたパンアダプターという製品があります(参考URL http://icas.to/lineup/pat.htm)
パンアダプター基板 PAT-70M 
パンアダプターには引き出すIF周波数に対して幾つかの種類がありますが、FT991ではPAT-70M(70MHz)を選ぶことになります。

この製品の具体的な使用方法については、販売元のページに各トランシーバーのIF信号を引き出すポイントの回路と、リグに実装した写真入りの記事が掲載されており、最初はこれを参考にしてFT991への実装を行いました。
webの記事では、FT991の中間周波増幅回路に引き出すポイントと、その回路図上及び基板の実装上の位置が分かるような資料があります。
 
回路図上のIF信号引出ポイントと基板実装図面(Webの記事に掲載されている)
これを参考にしてFT991にPAT基板を実装し、その出力をSDRドングルにつないでHDSDRで受信してみました。ところが期待したバンドスコープの表示が狭く何かヘンなのです。そこでwebの情報(英文)をあれこれ訳して読んでみると、このIF引出ポイントはルーフィングフィルターの後ろにあるため受信できる帯域が数KHzになる、と書いてありました。

そこでFT991のサービスマニュアルをwebで探し回り、何とかこれをダウンロードしてブロックダイヤグラムと回路図を見てみると、確かにこのIF引出ポイントの前にルーフィングフィルターがあり、これでは期待したバンドスコープになりません。

そこでルーフィングフィルターの前でIF信号が引き出せる箇所を探し、実際にリード線をハンダ付けできるポイントを探したところ、ルーフィングフィルターへの入力ラインに70MHzのLPFがあり、そのコイルとコンデンサの接続点が唯一ハンダゴテが入り、かつ引出リードをハンダ付けできることが分かりました。
 
ルーフィングフィルター前のIF信号引出ポイント(FT991のサービスマニュアルより)

実際のIF引出ポイント(MAIN基板)
HDSDRで144MHz帯のバンドスコープ
以上の実装を行い、FT991でHDSDRによ
り144MHz帯のバンドスコープを表示させ
ることができました。ただしこの実装作業
は対象になる基板上の素子が非常に小さい
ため、先端を針状にできるハンダゴテと手
放し作業が可能な「拡大鏡」が必要です。


なおHDSDRの設定では、RTL-SDRの設定
値の内、「ExtIO」をクリックして「HF
DirectSampling」を「Disable」にする必
要があります。

FT991のバンドスコープは、FT991Aのようにリアルタイムで表示ができず、表示SWを押すか間欠的に表示することしかできないため、このようなバンドスコープの追加は大変有効です。

同様にバンドスコープがついていない昔のリグにこれを実装すると非常に効果的だと思います。

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